ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんでおなじみなのがips細胞ですよね。彼と彼の研究チームは「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の作製に成功しました。
ips細胞は様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を持っているので、医療への導入が検討されています。将来的には様々な病気を治す可能性のあるものとして、現状の医療では治らないとされている病気の患者を勇気付けるものとなりました。
ips細胞に関しては、毛髪再生医療への導入も将来的には考えらており、実際に研究が進んでいます。もしも導入されることになれば、薄毛に悩む人がいなくなるかもしれません。
こちらでは薄毛治療とips細胞について徹底的に解説します。本当に毛髪医療に導入できるものなのでしょうか?さらに早ければいつごろまでに導入されるのか?導入されるのであれば費用はいくらくらいになるのか?ということについてもお伝えします。
発毛剤や植毛、そしてHARG療法などの現状の薄毛治療ではない新しい対処法を考えている方は要チェックです。
<目次>
ips細胞とは、どんな組織や臓器にでもなれ、いくつにでも増える細胞です。ような何でも変化できる細胞のことを指しているのです。人体の組織や臓器に変化できる細胞のことをいいます。
例えば心臓の悪い人の細胞を採取し、その細胞から新しい心臓を生成できる、といったものなのです。目が悪い人であれば、新しい目を作り出せるかもしれません。
もちろんまだまだ研究段階ではありますが、ips細胞の発見からすでに10年以上経過しています(マウスips細胞の作成成功は2006年、ヒトips細胞の作成成功は2007年)。研究はかなり進んできている段階に入っている、といっても過言ではありません。
人体から体細胞を採取します。その体細胞に対し、多能性誘導因子を加えた上で培養します。そして出来上がるのがips細胞というわけです。
ips細胞と似ているものとしてES細胞があります。ES細胞は無限増殖能をもった培養可能な未分化細胞です。
1980年代にマウスのES細胞の作製が成功し、90年代後半には人のES細胞にも成功。しかし分化を思い通りに操れないので、まだ実用化には至っていません。
Ips細胞とES細胞の大きな違いとしては、作製のしやすさがあります。ES細胞の材料は受精後6〜7日目の胚盤胞の細胞です。その細胞を培養します。一方でips細胞は、皮膚や血液など誰からでも採取しやすいモノを利用して生成できるのです。
もう一つ注目すべきなのが、ips細胞は様々な体細胞から作成できるので、自身のips細胞を作成できるといったメリットが有るわけです。ES細胞の場合は前述したように「受精後6〜7日目の胚盤胞の細胞」を利用します。要は男性の場合は確実に他人の細胞を利用するわけです。
自身の細胞を使うか他人の細胞を使うか、という部分ですが拒絶反応に大きく関わってくると考えられます。
仮にES細胞やips細胞で作成した臓器を体内に入れるとなると、他人の細胞で作成したものであるので拒絶反応が起きる可能性が高いのです。
一方でips細胞は自身の細胞が利用できるので拒絶反応のリスクが低いと考えられています。
実は2つのタイプの薄毛治療が検討されています。
どちらの方法が今後確立されるかはまだ不透明ですが、実は一時期は2018年から実用化されるとの話もありました。残念ながら現状では2020年以降に変更されています。
後頭部などのAGAの影響を受けない部位から皮膚を取ります。そして毛髪を生やしている器官である毛包原基をipsを利用して培養し増やすのです。増やした毛包原基を薄くなった部位に移植します。そうすると髪の毛が生えてきて薄毛が改善する、というわけです。
注目してほしいのが、後頭部の皮膚の採取部分は小さいので植毛のような傷跡はできない、という部分です。
現状の植毛の場合は、後頭部に大きな傷跡が残ってしまいます。その影響で坊主や刈り上げといった髪型が出来ません。後頭部の傷が他人にバレてしまうのではないかとビクビクしながら過ごす方も多いわけです。
もう一つ注目すべきは、髪の毛の残存本数が少なくても大量植毛ができる、という部分です。いままでの植毛については、つむじの後方や耳の周辺に一定量の毛髪が残っていなければ採用できません。採取できる本数にも限度があったのです。
Ipsに関しては無制限に増殖します。一つの細胞から数限りなく増やすことが可能なので、つむじの後方や耳の周辺の髪の毛の残存本数が少なかったとしても問題ありません。
いままではなかなかできなかった、15,000株植毛や20,000株植毛といった超大量植毛ができるケースもあるわけです。
薄毛の範囲が広くなってしまうと、髪の毛の残存本数から高密度の植毛ができません。結果的に植毛をしてもスカスカの状態になってしまうことも。Ips細胞系の植毛であれば、高密度植毛も可能です。
こちらも後頭部から採取をおこないます。しかし毛髪自体の細胞を採取するのではなく、「毛球部毛根鞘細胞」と呼ばれる細胞を採取するのです。
毛球部毛根鞘細胞は髪の毛を作る機能を持った細胞であり、どちらかと言うと育毛メソセラピーやHARG療法と似た機能があります。
育毛メソセラピーやHARG療法は髪の毛が生える機能を高める治療方法です。植毛のように直接髪の毛を移植して生やすのではなく、残存している毛根に活力を与えて髪の毛を生えやすいようにするわけです。
<毛球部毛根鞘細胞の機能3つ>
毛根が何らかの原因で弱っていると髪の毛を生やす機能が衰えている状態になります。そこで毛球部毛根鞘細胞を培養して注入し、毛根の本来持っている機能を発揮させるわけです。
ただし注意しなければなりません。こちらの薄毛治療法については、薄毛が進行し毛根がすでに死んでいる場合には効果を発揮しません。なるべく薄毛が初期の段階で行うべき治療方法なのです。
いまだにips細胞による薄毛治療は実用化されてはいないので、推測の域は出ないのですが、いくつか指摘されているデメリット(副作用を含む)について紹介します。
培養した細胞も人体の細胞が元になっています。その人体の細胞ですが、正常にいつも細胞分裂していくわけではありません。異常な細胞、いわゆるがん化してしまうケースもあるのです。
Ips細胞によって増殖させた薄毛治療のための細胞に関しても、ずっと正常であるとは限りません。異常な状態になってしまい、その結果がんになってしまうかもしれないわけです。
自身の細胞であれば身体は拒絶反応を起こしにくいわけです。要は免疫システムが働きにくいということでもあります。免疫によって癌化した細胞が見逃されてしまう可能性も考えられるので、ips細胞におけるがん化の研究には注視しなければなりません。
すべての薄毛の方にips細胞による薄毛治療が効果を発揮してくれるとは限りません。Ips細胞の植毛を利用した場合は、高確率で髪の毛は生えてきます。毛根自体を移植するような感覚になるので、しっかりと定着さえしてくれれば髪の毛は生えてくるはずです。
一方で髪の毛の成長を促進させる細胞(毛球部毛根鞘細胞)を培養して移植するタイプの薄毛治療に関しては、髪の毛を生やさなくなってしまった毛根に対しては効果を発揮してくれません。
せめて産毛だけでも生やしてくれる機能が残っていればよいのですが、全く髪の毛を生やさなくなった毛根は死んでいます。死んでいる毛根に毛球部毛根鞘細胞を注入したとしても意味はありません。
仮にips細胞による薄毛治療が確立されたとしても費用がどの程度になるかは現状では確実な額は公表されていません。先進医療となるので、費用が高額になることは間違いないのです。
ips細胞による薄毛治療を研究している企業の一つに資生堂があります。資生堂についても金額を明確化していませんが、「植毛と同等の価格にしたい」との意向があるようです。
植毛の平均相場は100万円から200万円なので、その程度の金額に落ち着く予定のようですが、最初は高額に設定されるでしょう。
マウス実験を行った時に、1本あたり100万円といった事が言われていました(マウス実験は2006年に実施)。しかし1本100万円で利用する方はほとんどいないでしょう。実用化される時には、もう少し金額が落ちついてくるはずです。
仮に1本100万円とすると、よほどお金を持っている方でなければ普通の植毛を利用するはずです。やはり植毛に対抗できるくらいの金額に設定される、と考えるのが自然です。
今のところips細胞による薄毛治療に保険が適用される可能性はありません。
そもそも植毛治療に関しても保険適用はなく、全額自己負担となっているわけです。Ips細胞による薄毛治療も「髪の毛を生やす」という、いわゆる美容目的となっているので保険適用はされないと考えられます。
もう一点保険適用がされない理由として「先進医療である」というものがあります。どんなに病気に効果がある治療であったとしても最初は先進医療扱いとなり、保険適用はされないのです。
Ips細胞を用いた病気の治療さえ、現状では実用化されていません。Ips細胞を用いた病気の治療が一般化して効果が確実に確認できてから保険適用の話が出てくるのです。
ちなみにips細胞による治療が一般化した場合には、円形脱毛症などの何かしらの病気が原因の薄毛の場合には保険適用がある可能性も捨てきれません。
円形脱毛症は免疫システムがおかしくなることによって、毛根が免疫に攻撃され脱毛してしまいます。
Ips細胞による薄毛治療が免疫による攻撃を避けられる、といったことがわかれば保険適用が場合によってはされるかもしれません。しかしそれも推測の域は出ないので大きな期待は出来ないのです。
ここでは、ips細胞を利用した薄毛治療の5つのメリットを紹介したいと思います。
Ips細胞を用いた薄毛治療は、傷跡が極めて小さくなるか、ほとんど見えないと考えられます。
採取する細胞はごく少量で良いからです。一つでも質の良い細胞が採取できれば、それを元に培養して増やせます。植毛のように植毛本数だけ傷の範囲が広くなるようなことはありません。
ちなみに植毛では毛の最終部分を刈り上げますが、ips細胞系の薄毛治療では刈り上げる必要はないと考えられます。
Ips細胞は無限に増殖できます。薄毛治療に用いる細胞が採取できれば、そこから何千・何万もの細胞を培養することも可能です。
植毛は植毛の施術を受けるたびに毛の採取を行わなければなりません。男性型脱毛症は進行するので、進行するたびに後頭部や側頭部から毛を採取することになるわけです。
Ips細胞の場合は、クリニックに元の細胞が残っていれば再度の採取は必要ありません。採取するための施術は1回で済むのです(注入する施術は複数回に及ぶ可能性あり)。
人工毛植毛をすると、異物を体内に入れるので体が拒絶は脳を起こします。要は免疫システムが作動して植えた人工毛の周辺の肌を炎症させ、結果的に脱毛へと至らしめるわけです。
ips細胞は自分の細胞なので、拒否反応の心配はありません。定着しやすい、と考えられるわけです。
かつらや増毛とは異なります。人工毛植毛とも違うわけです。
生えてくるのは自分の髪の毛なので、メンテナンスは必要ありません。染めたりも出来ますし、パーマを当てることもできるわけです。
かつらであればズレたりするのが心配かもしれません。Ips細胞による薄毛治療は自分の毛であり頭皮から生えているのでずれる心配もなく、見た目も自然そのものです。
植毛の場合は、1回の施術で5時間から6時間かかることも珍しくありません。毛を採取し、株分けを実施します。そして頭皮にスリットを入れて、1株1株を植えていくわけです。
Ips細胞による薄毛治療は培養をしなければならないので、少なくても2回の通院が必要になります。しかし後頭部の採取部分も小さく、採取したらその日は終了です。培養がされたらクリニックへ再び向かい、治療部へ注入します。
拘束時間としてはそれほど長いわけではないので、植毛治療よりも身体的負担は軽くなります。
植毛などを検討すべきだと思います。予定通りにips細胞による薄毛治療が実用化されるとは考えにくいからです。
そもそも当初は2018年実用化なはずであったものが2020年へ延びたのです。人への実用化については、「かなり苦戦している」と言っても過言ではありません。
さらに費用の問題もあります。実用化されたとしても、1本あたり5万円や10万円したらいかがでしょうか?1,000本植毛するだけでも5,000万円から1億円もかかってしまうことになります。
現在は2018年ですが2年後まで髪の毛が残存しているとは限りません。ある程度残存しているうちに施術を受けないと、容姿に急激な変化が出てしまうわけです。禿げ上がってからの治療では薄毛治療がバレてしまうわけです。
もちろんips細胞に期待する気持ちはわかります。今までの植毛治療よりはリスクが格段に小さくなるわけですからね。
たとえば現状で特に薄くなっている、または気になっている部分のみを植毛して「ips細胞治療の確立を待ってみる」というのはどうでしょうか?少ない本数の植毛であれば、傷跡もそれほど大きくなりません。
植毛であればある程度の時間稼ぎは出来ます。仮にips細胞が失敗に終わったとしても、植毛した毛は自分の毛なので今後も生え続けるわけです。無駄にはなりません。
植毛とその他の薄毛治療に関係するおすすめ記事なので、気になった方はチェックしてみてください。